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札幌高等裁判所 昭和56年(ネ)160号 判決

控訴人(原審原告)

福田敏次郎

右訴訟代理人

村部芳太郎

斉藤正道

被控訴人(原審被告)

武田エイ子

右訴訟代理人

細井洋

被控訴人(原審被告)

吉田明弘

右訴訟代理人

猪狩康代

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は「原判決を取消す。札幌地方裁判所昭和五二年(ヌ)第九一号不動産強制競売事件につき、同裁判所が作成した昭和五三年一二月二五日付配当表を取消し、控訴人に原判決別表(二)の通り配当する。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。

被控訴人らは主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張及び証拠関係は、次の通り付加するほか原判決事実摘示の通りであるからこれを引用する(但し、原判決二枚目表二行目の「別紙目録の不動産」の次に「(以下本件不動産という)」を加え、同一四行目の「一〇〇〇万円と」を「一〇〇〇万円を」に改める)。

(被控訴人ら)

控訴人は本件不動産につき所有権移転登記の抹消登記を経由していないから配当加入できないものである。即ち、控訴人は、本件不動産の仮差押後である昭和五一年六月二一日受附第二三三七六号をもつて同年三月一〇日訴外武田稔からの売買を原因として本件不動産の所有権移転登記を経由したが、その後同年七月一〇日右当事者間で右売買契約を解除し、控訴人は本件不動産の所有権者ではなくなり訴外武田稔がその所有者となつたから、控訴人は本件不動産の強制競売手続に配当加入することができる旨主張している。しかし、不動産の所有権喪失を第三者に対抗しうるためにはその旨の登記を経由すべきところ、控訴人は本件不動産につきその主張にかゝる所有権喪失に伴う登記を経由していないのであるから控訴人の右主張は失当である。

(控訴人)

被控訴人の右主張中、控訴人が本件不動産の強制競売手続に配当加入するためには、同不動産の所有権喪失を原因とする登記を経由することを要するとの点を争い、その余の事実は認める。

理由

一当裁判所は、控訴人の請求は失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は次の通り訂正するほかは原判決の説示する理由と同一であるからこれを引用する。

1  原判決七枚目裏一四行目の「このことは、」から同八枚目表五行目の「からである。」までを次の通り改める。

「そして、更に右の場合において、右仮差押債務者と同人から被仮差押不動産を譲受けた右第三者との間で、右譲渡契約が合意解除され、それにより右第三者が不動産の所有権を失うとともに右仮差押債務者が再び不動産の所有権を取得するに至つたとき、右第三者が右物権変動の事実及び右仮差押債務者に対して債権を有していることを理由として右不動産に対する仮差押から本執行に移行した強制競売手続に配当加入しうるためには、前記の不動産所有権の喪失についての登記の経由を要するものである。このことは、右の場合における仮差押債権者ひいては差押権者は民法一七七条の第三者であり、かつ、合意解除による物権変動の効果の遡及的消滅を右の者に対抗するには登記を経由していることを要すると解されるからである。」

2  同八枚目裏八行目の「また訴外武田稔」から一二行目の「ところはない。」までを次の通り改める。

「そして、訴外武田稔と控訴人は、昭和五一年七月一〇日右売買契約の合意解除をし、これにより本件不動産の所有権は再び訴外武田稔のもとに復帰したものと認めうることは前記説示の通りであり、右当事者間においてその後それに基づく登記を経由していないことは当事者間に争いがないから、右合意解除による物権変動の効果を仮差押債権者である被控訴人らに対抗できず、従つて、控訴人は本件不動産強制競売手続の配当に参加することが許されないのである。」

二よつて、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ、右と同趣旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから民事訴訟法三八四条一項によりこれを棄却し、訴訟費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して主文の通り判決する。

(安達昌彦 澁川滿 藤井一男)

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